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5日朝5時30分、三宅地区住民約180人、錆ヶ浜港着。東の風で白煙が流れてきていましたが、火山ガスは検知されないとのことでガスマスクは使用しませんでした。西側から見る三宅島は、雄山の上半分は荒涼とした枯れ木と火山灰の様相ですが山麓から海岸線までは以前の緑が復活しており、島での生活再開の希望を抱かせてくれるような眺めでした。 |
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6時。2年ぶりに伊豆地区の我家に到着。雑草が茂り、車も錆びて動かなくなっていましたが、家はあの日(2000年9月4日)と何も変わっていませんでした。あの日が昨日で、2年間がなかったような、そんな錯覚に陥りそうになりました。 |
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家の中に入ると、カビの臭いはしたものの2年前に慌しく全島避難した日と全く同じ状態、壁に掛かった時計も時間も狂わずに動いていました。セミの声も小鳥の囀りも聞こえています。本来の自分の居場所。しかし、数時間後にはまた島から離れなければならない、、、何とも云えない複雑な心境でした。
私の家は火山ガスの影響の少ない地区にあり、家もまだ新しく、屋根もトタンではない材質のため被害が無いだけで、火山ガスの影響の大きい地区、築後年数を経た家、島の一般的トタン屋根の家では時間と共に確実に家の傷みは進行しています。自分の家が朽ちていくのを目の前にし、有効な手立てを打てないでいる人たちの心中は察して余りあります。 |
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家の近くの沢で砂防ダム(鋼製ダム)の建設が進んでいました。工事費は約1億6千万円だそうです。
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さらに村道を進んでいくと、以前より木々は生長し道にせり出してきていました。伊豆の畑は、風除けに、切枝出荷用にとサカキが多く植えられいますが、ふたまわり位大きくなっていました。 |
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村道沿いのアジサイ、キイチゴ、サカキ、マグサ(ススキの類)など元から自生している植物達は元気に復活していました。それらに比べ杉、お茶、果樹など島外由来の植物は枯れた姿が残っていました。 |
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伊豆岬西原にあるハウスを覗いてみました。ユリの球根を持ち出すために昨年11月、一度来たことがあるのですが、前回はあまり竹も多くは無かった通路も今回は歩けないほどの竹やぶになっていました。 |
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レザーファン(切葉用のシダ)を植えてあったハウスも枯れて完全になくなり、カヤとマグサがびっしりと生えていました。これらは年々株が大きくなっていき抜根作業が大変になっていくでしょう。18棟のハウスパイプも完全に錆びていて帰島後には全て撤去しなければなりません。農地復旧、パイプハウスの撤去、新設、、、自己資金での再建は難しいです。 |
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2階建てプレハブの資材倉庫。昨年来た時は異常なかったのですが、今は屋根が半分飛んでいました。仕舞っておいた農業資材も、もう使えなくなっているでしょう。様々な個人財産は時間と共に朽ち果てていくでしょう。今行われている日帰り一時帰島も家屋の修理、財産の保全目的だそうですが、年に数回、一回5〜6時間ではあまりにも時間が短いです。 |
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ここは噴火の前年に新設したハウス9棟。昨年は見れず、今回始めて来ましたが、レザーファンは枯れて無くなり竹藪と化していました。苦労してハウスを建てて、苗を植え付けて、これから生産と言う時に噴火、悲しいですね。 |
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噴火の前年に植え付けたルスカス(観葉切葉)、手前に見えているミカンの葉っぱのようなのがそれです。ルスカスは火山ガスに強いようで、元気に育っていました。しかし蔓性の雑草が繁茂し始めているのでこのまま手入れしなければ日照を奪われ枯れてしまうでしょう。手入れをしたかったのですが、とても時間がありませんでした。 |
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ピンボケで見にくいですが畑土の断面です。下の茶色い土が元の畑土で上の灰色っぽいのが火山灰です。真中の少し色合いの違うところが堆積している火山灰の断面です。 |
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11時、バスに乗車。生垣のカイズカイブキ(先が尖って見えている木)があおあおしています。カイズカイブキは火山ガスに弱いにもかかわらず枯れていないのは伊豆地区にはあまり火山ガスはこないのでしょう。クリンルームなどの安全対策をすれば伊豆は住めるのではと話す人もいました。 |
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11時50分、東京に向け出港。手前に流れている白煙(後ろの白いのは雲)の下に青白く見えるのが二酸化イオウのガスです。
完全にガスが止まるのはいつになるのか分かりません。火山ガスが5千トン〜1万5千トン/日出ている現在もクリンハウスなど安全対策をとったうえで約600人の復旧作業関係の人たちが常駐(大変なご苦労だとおもいます)しています。避難解除はまだ難しいでしょうが、帰りたい人が少しでも早く帰れる(一時帰島でなく)ように住宅(自宅に戻る事が困難な人のために)や避難用クリンハウスなどの整備をお願いしたいです。
帰島の目処がないまま2年の避難生活が過ぎました。3年が限界だと言う声も聞きます。都会生活に馴染めない人の長期のストレスは健康を蝕んでいくでしょう、経済的にもくるしくなっていくでしょう。人の住んでいない家、手入れの出来ない資機材は時間とともに壊れ行くでしょう。時間が経つほど、帰れない人、帰らない人は増えていくでしょう。 |